妻曰く

プロジェクトマネージャーの妻による育児対応を巡る夫の記録

保健所の3~4カ月健診が疑問だらけだった

「育児に理解がない職場なんですね」

「一緒にいなくてかわいそうだと思わないんですか。お子さんが寂しくなると思わないんですか」。保健所の健診で妻が生後3か月で職場復帰したことを伝えると保健師さんにこう言われた。妻は「こっちだって息子と一緒にいられなくて寂しいけど仕事頑張っているのに」と言い返したくなったそうだ。我が家はいろいろ選択肢がある中で、家計や保育のプロの視点を育児に入れたいという判断から夫婦ともにフルタイムで働く道を選んでいる。

しかし保健師さんは我が家の事情や考えを聞くこともなく、その日仕事を休んで健診にきている妻に「休めないんですか」「育児に理解がない職場なんですね」と続けてきたのだ。夫としては憤りすら感じるし、「多様性の尊重」とか「育児と仕事の両立」の啓発活動に予算を投じている行政の職員がそれを言うかと思わずにはいられなかった。

保健所の3~4カ月健診は公衆衛生の観点などから意義があるのはわかる。しかし前述の保健師の妻への発言に限らず、妻は「疑問が残る対応が多かった」と振り返る。子育てをするようになって保健所の健診が「辛かった」「嫌だった」という話をしばしば耳にする。我が家は夫婦とも合理的な説明もろくにないまま「これはこういうものだ」と言われるのが割と嫌いだが、この3~4カ月健診では前述の妻への発言以外にもあった。

確認もないまま一蹴

印象に残っているのが、息子の歯をめぐるやり取りだ。発育や発達などの個別相談のとき、息子の口の中をみせつつ「歯は少し生えてきました」と伝えたところ「この月齢だとまだ生えてくるわけありませんから」と一蹴されたのだ。

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息子は歯の生え始めが割と早く、3か月になる頃には下の歯がうっすら白く見えてきていた。歯の生え始めは一般的には6~9カ月頃と書いてある資料が多く、最初は半信半疑だった。妻が小児歯科医の友達に写真を送ってみてもらい「これはおそらく歯だね」と返事がきて、夫婦で「早いね」という話になったのを思い出す。歯の生え始めは赤ちゃんによって違うようで、おかしなことではないと説明を受けた。
ところが保健所では、こういった経緯を言うまでもなく、そして息子の口の中を特に確認するでもなく、最初から歯は生えていないと言われたのだ。保健師さんもたくさん赤ちゃんをみた上での感覚があるだろうし、次から次へと赤ちゃんをみる健診では捌くことも必要かもしれない。妻は争う気もなかったので特になにも言い返さなかったが「決めつける根拠があるのか」と疑問が残ったそうだ。その後、息子の下の歯茎にあった「白いもの」は実際に乳歯として育ってきた。結果としては歯に間違いなかったのだ。

鵜呑みにするものでもない

赤ちゃんの定期的健診に保健衛生上の意義はあるとは考えている。それゆえ平日でも妻は都合をつけて息子をみてもらいに連れて行ってもいる。でも首すわりチェックの際のやり取りも踏まえて、我が家では公的機関で言われたからといって鵜呑みにするものではないと判断している

情報源を複数持ったり、本当にそうなのかと今一度疑問をたててみる。育児は情報が氾濫しているからこそ、問題意識がプロジェクトを進めるうえで大切になると考えている。

首すわり問題で考えた コツをつかむプロセス

3ヶ月検診で指摘

「ちょっと首すわりがしっかりしていませんね」。息子は地元の保健所での3ヶ月検診の時、担当した医師にこう指摘された。うつ伏せ状態から頭を持ち上げられるかというチェックをしたときにうまくできなかったのだ。

f:id:tnkdad:20190420011001p:plain首すわりには赤ちゃんによって個人差があると聞いていた。だが、お医者さんがいかにも「これは問題だ」といった様子で言うので、妻もどう返していいのかわからなかったそうだ。妻曰く「一番ギョッとしたのはその次のやりとりだった」。まずその医師は「母子手帳には書きません」と言ってきた。理由がよく理解できなかった妻は「それはどういう理由なのですか」と質問した。それに対し医師は「それを理由に入園を断る保育園や幼稚園、小学校があると聞いたことがありますからね」と説明したのだ

そういうことが実際にあるのか、真偽のほどは定かではない。妻は問題を早期にみつけて対処するということ自体は大切だと考えている。でも「3か月検診の首すわりについてどう書かれているかがずっとついてまわって、ある種の排除につながる発想ってどうなのだろう」と考えたそうだ。医師はおそらく息子の将来、あるいは我が家に配慮してくれたつもりなのだろう。しかしあまりに当然のことのように話すので違和感があった。

姿勢の問題だった

そもそも3か月の首すわりの有無が発達にとって決定的な問題になるということも聞いたことがない。疑問が残った妻は出産した病院で小児科医に息子を診てもらったときに一連のことを話して、見解を聞いたのだ。

思わぬ展開になった。

話を聞いてくれた医師はまず、息子が3か月検診の時にどういう姿勢で首すわりチェックをしたのか確認してきた。妻が具体的に説明すると、医師は笑って「腕を開いていたら頭があがるわけないですよ。大人もそうでしょう」と言う。そして続けて「おそらく首はすわっているよ」と話すと、息子に「もう少しおててを内側にしてみよう。こうだよ」と教え始めた。息子は何度か教えられた通りにポーズをとると、自らコツをつかんだのか、うつぶせ状態から頭を持ち上げられるようになったのだ。

息子が3カ月検診で頭を持ち上げられなかったのは、つまるところ姿勢の問題だったのだ。よくよく人間の骨格を考えたら当然のことではある。そして検診は発達をひとつの側面から確認する意味合いはあるが、姿勢というコツを身につけているかどうかで違う結果がでるものだったとも言えるわけだ。ますますもってそれで入園、入学を判断するって話がでてくるのはどうなのだろうと思わずにはいられなかった。

自ら体験して検証

この問題はいろいろな示唆を与えてくれた。帰宅した妻は実際に自らうつ伏せから頭を持ち上げる動作を試してみたという。「確かにお医者さんの言う通り、腕を広げていたら頭をあげるのは難しいのが身をもってわかった」そうだ。

妻は「ユーザーエクスペリエンスに対する検証が不十分だったのかも」という言い方もしていた。例えばウェブサイトを構築したとき、実際にユーザーとして使ってみて検証する手法を用いることがよくあるそうだ。妻曰く「頭で考えるだけだなく、体験することで問題に気付くことも多い」という。結果論ではあるが、息子の首すわり問題も自ら体験して確かめてみる視点で考えたら見えた側面があるのかもしれない。「ひとつ学びを得た」と振り返っていた。

要素にわけて考える視点

もうひとつ考えたのは、結果だけでなく、要素にわけてみる視点が課題解決には必要だということだ。息子の首すわり問題では、3ヶ月検診のは時には「頭が持ち上がらなかった」という結果に気を取られて、親としても「姿勢」という要素をみる視点がなかった。妻も「要素を分解して、それぞれ何が必要かという視点が大事だ」と考える。

これは新しいことを身に着ける過程でも大切だろう。自分の経験を振り返っても、例えば逆上がりができなかったとき、一つ一つの動作を確認しながら教えられたらできるようになった記憶がある。これはバットの持ち方にしても、レポートの書き方にしても、言えるはずだ。

息子は寝返りやおすわりをするようになり、これからおそらくつかまり立ちしたり、歩くようになったりすると見込まれる。その先にはもっと複雑なことを身に着けるだろうし、時として壁にぶつかったりするだろう。もちろん全てできるようになるわけじゃないだろう。

これらは親が代わることはできない。でもコツをつかむ上で要素にわけて説明する視点を持つことは一緒に取り組めるかもしれない。

息子の首すわり問題はいろいろなことを考える機会になった。

「育児神話」にとらわれない妻の思考パターン

目を合わせないと人の気持ちがわからない子になる?

「ミルクをあげるとき目をちゃんと合わさないと、 人の気持ちがわからない子になりますよ」 。息子が生まれて1週間ほどしか経っていないころ、妻は小児科医からこう言われたそうだ。

f:id:tnkdad:20190418003203p:plain帝王切開直後で家族の手助けも全くなかったため、産後ケアを受けていたときだった。ヘトヘトになって自分のご飯を食べていた。

妻は「そもそも目がまだ開いていないし、視力もついていない赤ちゃんと目を合わせるってどういうこと?」「赤ちゃんは顔の向きくらいは把握できるってこと?」と疑問を抱いたそうだ。

確かに夫からみても、言われてみればどういうことなのかわからない。考え始めるといろいろ疑問はでてくる。ミルクをあげながら目を合わせるのが、どういうプロセス、論理で人の気持ちがわかるようになるのに役立つのだろうか。もっと突き詰めると、人の気持ちを推察したり、人をよく観察できるというならまだしも「気持ちをわかる」なんてことがあるのだろうか。

「育児神話」があふれている

妻は疑問が心に引っかかったまま、ほどなくして出産した病院の小児科医に「ミルクをあげるとき目をちゃんと合わさないと、 人の気持ちがわからない子になる」と言われことを伝えた。そこでは「そうは言っても、この月齢の赤ちゃんは一般的にまだ目があまり見えていないので、 目を合わせること自体が難しいかもしれません」とあっさりと言われたのだという。かかりつけの産婦人科医は「いまだにそういうこという医者がいるのか」という反応だったそうだ。

妻曰く「根拠がよくわからない『育児神話』とでも言える話を頻繁に聞く」。夫である自分からみても確かにそう感じる。よくあるのは「お腹を痛めて産むから愛情が生まれる」「小さいのに保育園に預けるのはよくない」などだ。

余裕をなくしては元も子もない

息子を授かってから、育児にまつわる様々なアドバイスや情報に触れることが格段に多くなった。育児という共通のテーマで、様々な考え方や実践例を知ることができるのはとても刺激になる。自分たちに無い視点を得て、子育ての方法の幅を広げることもある。

一方で育児は「子どもがちゃんと育つようにするには・・・」という「べき論」が主張されがちだとも感じる。そしてその中には一見もっともらしいが客観性がなく、真偽が怪しい「育児神話」とも呼ぶべき情報に接することが少なからずある。息子のためにできることはしたいとの気持ちの一方で、そういう情報に惑わされて「こうしなきゃいけないのだろうか」などと義務感を感じすぎたり、余裕をなくしては元も子もない。

我が家ではジーナ式を取り入れたが、深夜授乳のときは目を合わさないようにとの説明がある。そもそも暗い中で授乳するように書かれている。息子は目を合わすのを試してみると、確かに興奮してしまうのか、はしゃぐ傾向があるようで、目を合わさないようにした。これも人の気持ちがわかるかどうかで考えると良くないとでもいうのだろうか。

目を合わせる意義も考えた

一方で妻は「目をみていたほうがいい場面もある」と話す。息子の目線で息子がなにに興味を持っているか目標物を知るときだ。例えば食器をみていたら、次に食器をひっくり返す可能性がある。これから行動力がついてくると、危険から守るために視線を追う意義は高まるだろう。

視力が伴っていない時期に言われても…との思いは拭えないが、もしかすると最初の小児科医の発言はこういう背景もあるのかもしれない。しかしそれならば、息子が人の気持ちがわからなくなると感覚的に危機感を煽るような言い方ではなく、目線を見る意義を論理的に言ったほうが伝わるのではないか。この一件では妻の根拠や論理性をまずみようとする思考パターンをみて、いろいろ考えさせられた。

授乳量は定量把握 我が家の「データドリブン育児」

妻に「職場で子育てのこととか話題になる?」と聞いたところ、妻が最近職場で「データドリブン育児」に取り組む人として少し話題になったことがわかった。響きが格好いい表現なので早速使ってみたい。今回はデータを定量的に集め、それに基づいて判断、行動している例として、息子の授乳量の定量的把握について振り返ろうと思う。

授乳量は発達の要素

赤ちゃんが飲んだミルクor母乳の量がどう推移しているのか。これは子どもの状態を見る上で重要なデータだ。乳児の発達をみる上では体重が指標となるが、それを左右する重要な要素と言えるのが授乳量だ。妻曰く「 ビジネスで言うところの『KGI』(Key Goal Indicator=目標達成できているか定量的に評価できる指標)が体重で、『KSF』(Key Success Factor=成功するための要因)が授乳量と言える」。

我が家では授乳量を定量的かつ継続的に記録することした。妻が「もし飲む量がどう推移しているか具体的にわかっていれば、例えば体重が増えていない場合、そもそも飲む量が少ないのいか、それともしっかり飲んでいるのに体重が伸びていないのか、切り分けて考えることができる」と判断したためだ。つまり授乳量を定量的に把握していれば、何かあったときに原因を考え、対処する選択肢がなにか判断しやすくなるわけだ。

母乳は搾乳して計測

データは継続的に続けられ、かつ感覚に頼らない方法で集めるのが望ましい。ミルクは哺乳瓶で量が計測できるため、基本的にはそれを記録するだけで済む。問題は母乳を飲んだ時である。「このくらいの時間飲んだらこのくらいの量を飲んだと見なす」 という説明も聞いたことがあるが、飲むスピードは赤ちゃんによって相当な違いがあるのではないか 。また生後間もない赤ちゃんは満腹中枢が未発達であり「 赤ちゃんが満足するまで」というような目安も成り立たないのではないか。

f:id:tnkdad:20190417094112p:plain具体的な変化を数字で把握する方法としては、母乳を飲む前後で赤ちゃんの体重変化を比べる手もある。我が家でも息子の体重変化を把握するために赤ちゃん体重計を導入したが、毎回息子を乗せて測るのは手間がかかる。さらに体重計の上で息子も動くので、本当に正確に測れているのかも怪しい。実家の母からは、自分が赤ちゃんの時に母乳を飲む前後で体重を測って記録をつけたと聞いたが大変だったのだと思う。

そこで妻が考えた解決策は、母乳も搾乳機でしぼって量をはかってから、息子にあげることだった。これならば定量データとして記録できるし、ミルクとあわせて量を調整することもできる。夫である自分も量を確認しながら授乳できる。授乳の場所も決めて、それを習慣化する上でも適当な判断だと思った。

飲む量把握をリスク管理につなげる

子どもによって飲む量には個体差もある。妻曰く「息子が飲みがいいのか、悪いのかを判断するには、 一般的な目安と比べるだけではなく、息子の実際に飲む量がどう変動しているのか継続的に把握する必要がある」。我が家では息子が飲んだ量と時間を育児アプリで継続的に記録し、夫婦で共有することにした。たとえば生後2カ月の時点では、 その月齢の目安としてミルク缶には800mlと書いてあるが、息子は基本的に640-670mlを飲むことが多かった。息子はおおむね1日にミルクの缶に書いてある目安量の8割程度を 飲む傾向がつかめ、体重の増加も平均的に推移した。

妻は「定量データをとったら、基準外の時にどうするかを決めておくのがリスク管理の手法だ」とも指摘していた。健診の際に妻が出産した病院の医師に哺乳量や体重の具体的な数値も示しつつ話したところ、医師曰く「500mlとか550mlと れていれば体重の伸びには影響しないだろう」とのこと。息子の飲む量の推移は把握できるようにしたので、予測される範囲から「外れ値」 が3日続くようなら医師に相談するという対処方針を決めた。「外れ値」がでたら「すぐ」としなかったのは、1日だけ外れ値がでても単に「飲みムラ」である可能性も高く、直ちに健康や発達に影響するわけではないと考えられるからだ。

妻はプロジェクトマネジメントにおいても定量的な指標で監視コントロールする方法を使う」と言っていた。例えばプロジェクトのミスの発生率をトラッキングしていると、そのチームや作業の内容から予測したパフォーマンスに比べミスの 発生率が低くなっていれば「 気付いていないミスが隠れているのではないか」、もしくは「ミスを隠している例があるのではないか」と考えることができる。データを継続的にみているから、問題を見つけ出し、対処することができるわけだ。息子の発育や健康状態に問題がないか、授乳量をトラッキングすることで見つけやすくするのと相通ずるところがある。

三者に説明もしやすく

定量的に授乳量を把握していると他の人への説明もしやすくなる。通院したときには「800ml飲んでいたのが、昨日は500ml だった」などと医師に具体的に説明できる。「どうも飲みが悪いようで」と伝えるより医師も判断しやすいだろう。医師からは「その量が続くようならまた来て下さい」といった具合に具体的な説明が返ってきた。また保育サービスで預ける上で、いつもはこの水準ですと明確に説明ができ、きょうはそれに比べどうだったかという観点で観察して頂けた。

いまは育児においてもデータを記録するツールが充実している。「データドリブン育児」の可能性はまだまだあると感じている。

生後2か月でひとり寝を始めた息子のルーチン

息子は生後2カ月になるかどうかの頃から一人で寝るようになった。決められた寝場所に移動し、部屋を暗くすると大抵は指をチュッチュと吸い始め、しばらくすると入眠する。

生活リズムの習慣化

我が家ではジーナ式のスケジュールをもとに、息子の生活リズムを習慣化した。

ジーナ式の本では

毎晩同じ時間に同じ流れで寝かせてください 

とある。加えて就寝前に赤ちゃんが興奮するようなことは避けるようにも指摘している。

我が家はベビーベッドを使わなかったので、静かに部屋に連れていき、最初のうちはベイビーボックスの箱で、途中からはベビーサークルの中に、スリーピングバッグに入れて、部屋の明かりを落として寝る流れにした。泣いて起きちゃう問題などもあったが少しずつ、寝る時間になると自分から指しゃぶりなど「寝る準備」をするようになった。

9ヶ月になる今ではお風呂に入った後は、親がモタモタしているとバタバタしながらねんねを訴え、寝室に連れて行くとにっこりして寝る。朝は自分で起きることも多いし、眠そうな様子のときも、部屋を明るくしてスリーピングパックから出し、リビングに連れて行くとお目覚めだ。もう朝ごはんの時間だとわかっているようだ。ルーチンができているのだ。息子はこのルーチンや体調が乱れなければ、基本的にいつも落ち着いて過ごせている。

逆にある日、寝る前に息子をギュって抱きしめてあたまをなでなでしたら、「それは違うっ!」と言わんばかりに手でバシッと払いのけてきた。おそらくなでなでは彼にとって入眠に向けたルーチンにないことで、余計なことだったのだろう。それをやめると、息子は落ち着いておやすみモードになった。

大人もスイッチとなる習慣は大事

「大人でもルーチンは大事なことだよ」と妻は話す。確かに入眠ひとつとってもそうだ。リラックスできる服に着替えて寝室にいくと眠くなったりする。いつもと違う枕や環境だと寝付きが悪くなるという話はよく聞くし、興奮したままの状態では入眠しにくくもある。

人間の特性、自分の特性にあわせた「スイッチ」となる習慣を知っておくことはパフォーマンスに直結する。妻は仕事でうまく行かないとき、同じ漫画を読むことで気持ちを入れ替えるのだそうだ(その漫画とは「弱虫ペダル」と「キングダム」、そして「ぶんぶくたぬきのティーパーティ」らしい…タヌキものが入っているのが嬉しい)。自分はどうだろう。イライラしたときはひとりきりになること、そしてお茶を入れることで少し冷静になれる。これらもルーチンと言える行動だろう。自分でコンディションを整えるのは社会で生きる上で大切だが、息子をみているとすでに入眠や起床、食事などにおいてそれぞれそのためのルーチンがあるようだ。

不確実性を減らせば課題に集中できる

プロジェクトを進めるという観点でも、妻は「ルーチン化できるところはなるべくルーチン化する意味がある」と考えているそうだ。プロジェクトは予測不能な要素が多いものだ。妻曰く「予測不能なことへの対応は緊張するし常に判断が求められる。労力もかかるしつらい。できるところから誰でもできるワークフローに落とし込み、少しでも不確実な部分を減らすのが大事」なのだそうだ。

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フォーマットを確立すれば、そこに関してはアウトプットが均質化できる。一定水準のクオリティで品質コントロールができれば、プロジェクトは見通しも立てやすくなるので、それを前提に進めることができるわけだ。ただし妻曰く「裏を返せば質が悪いルーチンだと、それを続けると質が悪い結果を再生産することにつながってしまう」。

育児は毎日刻々と変わる課題に対処していかなければいけない。我が家の育児プロジェクトも、息子の成長とともにはじめてのチャレンジの連続だ。そのような中でルーチンで生活スケジュールを整えている状態にあれば、それを基盤に課題に集中して向き合うことができる。

例えば離乳食の開始もそうだった。息子はミルクを飲むときに、同じ時間に毎回スタイをつけてチェアに座るようにしていた。離乳食を加えるときにも同じ時間に同じように座らせてあげた。つまりルーチンの基本形を変えずに離乳食だけ加えた形にしたわけだ。息子はすんなりと食べ始め、そのまま離乳食のルーチンとして確立した。

ジーナ式に合理性を感じた理由

状況は子どもの特性などにも左右されるので問題はそう単純ではないが、少なくとも最初に型ができていたので親として次の課題に的を絞って対応できたのは間違いない。もし決まった時間や食事の合図などもなく、ハンドリングしなければいけない要素がたくさんある状況だったら、課題の整理が大変だったと思う。ルーチンがあることで、息子の反応をみて親として何をしなければいけないかもつかみやすい。息子の状態の変化にも気付きやすくなる。「黄昏泣き」問題も、スケジュールが確立していたから、仮説をたて検証するプロセスが進めやすかったと言えそうだ。

ジーナ式をはじめ、決まりごとを習慣化してスケジュールを整えるやり方は一定の合理性があると、妻の説明を聞いて改めて考えさせられた。

プロジェクト管理の視点が育児に生きた

 息子を授かり、我が家の「子育てプロジェクト」が始まったことで、プロジェクトマネジメントを仕事にしている妻の課題解決力という大きな発見をした。それがブログを立ち上げたことにつながっている。

ブログを始めて1週間。妻が仕事で身に着けたスキルを子育てに自然と応用している姿を通じて「プロジェクトマネジメントの視点は育児にも生かせる」と考えた内容を整理したい。

プロジェクトマネジメントって? 

そもそもプロジェクトマネジメントとは何か。妻に「どんな仕事なのかコンパクトに言うとしたら」と聞いたところ「プロジェクトの目標を達成できるように何をすべきか考えていくことかな」と返ってきた。計画をたて、調査などもしながら、期間やコストなどの条件の中でいろいろ対応を検討、検証していく。それがプロジェクトマネジメントだ。このサイト(プロジェクトマネジメント | IT用語辞典 | 大塚商会)などでは簡潔に紹介されている。

ここで気になるのはプロジェクトマネジメントにおける「プロジェクト」とは何かだ。なんとなく概念を理解しているようで理解していない気がして、これも妻に聞いてみた。妻曰く、一般的にマネジメントするのは「非定常の有期性業務」なのだという。いつまでに何をやるかが定まっていて、かつフォーマット化されていない業務をどう遂行するかを考えているということだ。 

育児は「非定常」でフェーズがある

妻曰く「子育ても非定常業務だと言える」。子どもの状況も刻々と変わるし、明日何が起きるかわからないし。親の働き方や周辺環境、保育などの状況も変数になる。月齢、年齢を重ねるごとに乳児期、幼児期といった発達のフェーズ、寝返りとか、おすわり、人見知り期といったマイルストーンがあり、それにあわせてコストや資材調達、関係する人とのコミュニケーションなど様々な要素に気を配って、日々考えながら進める。その意味で、妻が仕事としているプロジェクトマネジメントの対象と共通点があると言えるのだ。

妻によると「最初からプロジェクトマネジメントを子育てに当てはめようとの発想だったわけではない」そうだ。曰く「プロジェクトマネジメントの仕事をしていたから、子育てにもその考え方をそのまま活かせた」のだという。「プロジェクトマネジメントのフレームワークを応用しながら整理して課題を考え、必要なことを実現する流れができた。ゼロから『どうしよう』とならず、気持ちよく息子に接する手助けになった」とも話す。

育児はチームで取り組む仕事

育児にプロジェクトマネジメントの視点が生かせるのは、育児がチームプレーだからという視点もある。

妻が仕事で向き合っているプロジェクトは基本的にチームで課題に取り組む。そのためにどのようにチームを編成し、円滑に課題に取り組めるようにできるかなども考えているそうだ。

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よく考えれば子育ても同じだ。もちろん子育てする環境は家庭や地域によっても様々だが、それに応じた必要なチームを編成して共通の目標に向けて課題に取り組む。直接的に子どもの世話をすることに限らず、資金を調達して管理したり、家庭の外の資源をつかったりもする段取りも欠かせない。情報共有、連携プレーも大事だ。

我が家の「育児プロジェクト」では、妻がプロジェクトマネージメントの知見を生かして必要なことを可視化し、共有してくれていることがとても重要な役割を果たしている。新生児期には育児アプリやGoogleカレンダーでタイムスケジュールをつくり、居宅の保育サービスを使うようになってからは、どのタイミングで何が必要か、ミルクの量や食事の内容、息子のルーティンまで具体的にまとめたスケジュール表をつくってくれた。そのおかげで夫である自分も、保育サービスの方もその都度悩まずに離乳食をあげたり、息子を寝かせたりできる。

これはプロジェクトマネジメントでも重要なリスク管理とも言える。(あって欲しくはないが)例えば妻が病気になったりしたときなど非常時に、息子にとって継続的な環境で子育てを進めやすくなる。

【まとめ】「よりよい育児」を考える手段だ

 もう一度全体を整理してみたい。

育児はプロジェクト管理が対象とする「非定常の有期性業務」と言える

〇育児はチームプレー。その意味でもプロジェクト管理の知見は生かせる。

一般的にシステム構築などITプロジェクトは納期までに目的に達する成功率が4割程度なのだそうだ。何をやったらうまくいくかの知識体系であるプロジェクト管理の知見をいかすと成功率は7割くらいまであがるのだという。

子育ては目標が定量的にクリアではなく、正解というものもないことが多いのかもしれない。しかし、子どもが様々な発達の段階でひとつひとつ歩めるよう、その時々に必要な環境をつくるという意味で、ヒト・カネ・モノ・情報を「適切に管理」して課題解決することが大事なのは間違いない。そして今ある課題に対応するかだけではなく、ある程度の期間での目標設定をして行動することも育児は大事だ。妻曰く「無策は愚策に劣る」。我が家にとっても息子の育児は一大事業。妻の行動や言葉に触れながら、夫としてもその事業の一員としてマネジメントの視点に基づいて取り組む大切さを実感している。

「黄昏泣き」を解決した妻のプロセス

ジーナ式育児の情報をネットで調べていると、うまくいかなくなったという話をちらほらみる。我が家も息子が生後2ヶ月になる頃毎晩20時頃(就寝1時間後)に決まってギャン泣きしながら起きてしまうようになった「この時間に起きる習慣がついてしまうと生活リズムは崩れてしまう」と問題意識を高めた妻が、ジーナ式を臨機応変に応用させて全力解決したのだが、そのプロセスを振り返ってまとめてみたい。

観察から推測「コリックではないか」

妻が「寝付いた息子が起きてしまう」という問題に向き合うため真っ先に取り組んだのが、事象が起きるタイミング、条件等を注意深く観察することだった。まるで研究をするように息子の様子を見続けた妻。そしてしばらく経ったある日、息子の身体を垂直に起こした状態にするとすぐ泣き止むこと身体を起こした状態で1時間ほど経てば再び寝かしても泣かないことを発見したのだ。
f:id:tnkdad:20190409232828p:plainこれはどういうことなのか。妻はネットを検索したが日本語では解決につながるような情報はあまり得られなかったそうだ。日本がダメなら海外だ!と、妻が見つけてきた海外の育児フォーラムの「コリックで毎晩起きてしまう」 というトピックだった。

コリックとは明確な定義はないらしいが、赤ちゃんが激しく大声で泣き続ける状態のこと。日本では「黄昏泣き」と言われる夕方の大泣きがよく知られている。妻は息子の状態と育児フォーラムにあった症状も、発生理由も当てはまるので「その可能性が高いと判断した。

「打ち手」検討 寝る前のミルクをやめた

コリックについて調べてみると発生原因として「腸内ガスの貯留」などによる消化器官の痛みが指摘されているようだ。胃がねじれる胃軸捻転との関係を指摘する情報もあった。寝る前に飲むミルクと関係しているんじゃないだろうか。そう考えた妻はさっそく以下のような仮説を立てた。

寝る前に時間を置かずに消化の悪いミルクを飲むので、生後2ヶ月で胃がまだ固定されていない状態では胃が踊ってしまう 。寝返りもできないので、踊った方向に胃軸が捻転し、 痛みが発生してギャン泣きする

仮説を立てたら、すぐに対応策の検討と検証に移った。妻が「打ち手」を考えるにあたり思い出したのは、妻がしばらく前に仕事の研修で受けた「効率的に解決するためにはまず自分でコントロールできる部分に絞って、リスクが少なく重要な原因から取り除いていく」という視点だったそうだ。

ジー式日程も臨機応変

今回のケースにおいて、自分がコントロールでき、リスクが少なく重要な原因は何が考えられるだろうか。妻は仮説に基づいて「寝るまで時間を置かずにミルクを飲ませる状況を解消してみよう」と考えた。寝る前にミルクを飲ませていたのは、ジーナ式で寝かしつけにミルクを用いる方法が説明されていたからだった。しかし大事なのは全体のリズムを崩さないために息子が泣く原因を取り除くことだ。仮説はあくまで仮説だったが、今回は観察と情報集めをして考えうる臨機応変な「打ち手」を実行したことで、寝付いたあとの夜泣きは見事にピタッと止まり、再現しなくなった。

ただ何でもきれいに解決できるわけでもないだろう。妻の解決を探る取り組みを見聞きして、しっかりリスク管理した上で「打ち手」は自分でコントロールできる範囲で考えていることがこの話の大事なポイントだと思っている。原因究明の努力や解決策を考えて決めることも手段であって、それ自体が目的ではない。目的は成長フェーズごとに息子も我々夫婦もより快適に過ごし、息子が自分で生きていける力をつけていくことに資源を投入できるようにすることだ。単純に解決策が見つかってよかった!という話ではなく、目的のために必要だと考えて、思考を止めずに息子をしっかり観察して、対応策を丁寧に検証していった妻のプロセスにこそ、夫として学ばされた気がする。

【まとめ】「わからない」で片付けなかった

息子が夜寝付いてもギャン泣きしながら起きてしまう問題に取り組んだ流れを改めてまとめてみる。

〇まず息子をよく観察して、症状の詳細をみて情報集め

〇「コリック」の可能性が高いと判断。寝る直前の授乳を避ける「打ち手」を検討

〇検証してみると夜泣きは止まった

よく「仮説-実行ー検証-仕組化」というメソッドを耳にするが、まさに妻はこれをやっていたように思う。赤ちゃんが泣くのは当たり前のことだが、妻は「赤ちゃんが泣くのはわけがわからないこと」で終わらせず「何らかの要因があるに違いない」という発想だった。それゆえよく観察して情報を調べるところから対処できたのだろう。妻曰く「『わからない』で片付けたら、解決のチャンスを失う」。夫からみても示唆に富む指摘だった。